「締めつける」から「引き上げる」へ。「SUHADA 肌リフト」開発秘話

語り/西澤孝弘(インナーウェア商品統括部<取材当時>)
星加真美(商品統括部 デザイン一課)
杉野菜穂子(ワコール人間科学研究所)

だれもが気になる下半身の"たるみ"。そこに焦点をあてた、「SUHADA 肌リフト」が誕生しました! 機能、素材、デザインなどあらゆる面で、これまでのガードルのイメージをくつがえすチャレンジを続け、アイテムが完成するまでのストーリーを追います。 SUHADA 肌リフト

展示会で大反響を呼んだ
肌リフトのできた背景とは!?

――「肌リフト」のお披露目となった、2016年秋冬の展示会での反響、すごかったですね。

西澤
 400人の方にはいていただいて、98%の方が効果を実感したとアンケートに書いてくださいました。

杉野 2年かけて開発した月日の努力がすべて報われたようで、めちゃくちゃうれしかったです。

――「肌リフト」は、新感覚のボトムということですが、そのようなボトムをつくるに至ったきっかけを教えてください。

西澤
 今、特に若い女性の中で、ガードルなどの補正下着離れが進んでいて、「次にどんな商品をつくったらいいか」を考えるには、まずこの現状に向き合う必要がありました。

星加 従来のガードルの「キツい」「締めつける」「ダサい」というイメージが壁になっているのかも、と。「美しさ」と言ってもその基準は時代によって変わります。今までのような "締めつけて造る"美しさではなくて、自分がもっている本来の"美しさを引き出す"ことができれば、革新的な商品ができるのではないかと考えました。

また、からだの気になっているワードとして「たるみ」が出てきました。調べると、これは若い世代も気になっていることだとわかり、これらの現状を踏まえて検討を進めました。 星加真美(商品統括部 デザイン一課) 星加真美(商品統括部 デザイン一課) 杉野菜穂子(ワコール人間科学研究所) 杉野菜穂子(ワコール人間科学研究所)

新機能への可能性を秘めた
"ナノフロント®"が開発の鍵に!

――開発は、いったい何から始めたのでしょうか。

杉野
 ボトムをはいたとき、ボディラインはどう変化しているのかを調べるところから始めました。モニターさんのヒップに線を書かせてもらって皮ふの動きを調べると、ガードルを着用するとヒップラインが上がっていることは確かなのですが、屈伸や足上げをすると戻ってしまうこともわかったんです。

それを見るうちに、「そうだ、皮ふ自体を上げておけばいいんだ!」「皮ふ自体を『引き上げて』留めておけるような何かがあれば...!」と思い立ったんです。そこから「NANOテープ」の開発を進めました。

――「引き上げる」ための肝となる、NANOテープとは何でしょうか? 

杉野
 帝人株式会社が開発した、髪の毛の1/7500という超極細の繊維「ナノフロント®」を使用したテープのことです。繊維が細い分、肌への密着度が上がり、密着するだけに、ピタッと止まりすべりにくくなります。「ナノフロント®」は、ゴルフの手袋やスポーツ用の靴下などにも広く使われているもので、細くしなやかな分ソフトな肌触りもその特徴です。 ナノフロント® ――そのナノフロント®を使って、皮ふをそのまま引き上げるということですね。

杉野
 はい。 通常の生地は、伸ばすと繊維同士が束のようになって集まり、繊維の一本一本は肌に当たりにくくなります。そこで、はく時、はいている時の生地全体が伸びている状態の時に、ナノフロント®の超極細繊維一本一本が肌に密着して皮膚を引き上げる、特殊な編み方を模索し、"NANOテープ"が完成しました。

――触るとモフモフとここちよい感触ですね。NANOテープが腰骨の位置についていることにも意味がありますか?

杉野
 腰骨辺りの皮ふは、ほかの部分に比べて伸びが少ないんです。皮ふの伸びの少ない部分にNANOテープがあれば、皮ふを引き上げたままキープできます。といっても腰骨辺りの皮ふも少しは動くので、テープを3本にすることで間をあけ、からだの動きに追随できるように工夫しました。 NANOテープを3本にすることで間をあけ、からだの動きに追随できるように工夫しました ――なるほど。同じ動作でも皮ふが伸びる部位と伸びが少ない部位があるのですね。

杉野
 はい。腰骨とは反対に、よく皮ふが伸びるのはヒップ下。ですから、生地は、激しい動きにもついていける伸びのいい素材を選びました。そうでないと、結局引き上げた皮ふも戻ってしまいますから。全方向によく伸びる生地を使うと、動いても皮膚の伸びについてくるので、着ごこちも良くなります。おなか部分も伸びを考えてつくっているのと、NANOテープの引き上げで、おなかおさえにも効果があります。 生地は、激しい動きにもついていける伸びのいい素材を選びました

思わず手に取りたくなるような
エレガントなデザインを採用

――最初に「SUHADA 肌リフト」を見たとき、デザインが大人っぽくて素敵だと思いました。

星加
 デザイン面でも、これまでになかったボトムをつくりたいと、高級感やファッション性にはとことんこだわりました。高級感を出すためにチュールを重ねていることもデザインのポイントです。プリント柄にしても、単純な色合いだけでなく、さまざまな色が重なり合ったような、ニュアンスのあるカラーに仕上げています。 思わず手に取りたくなるようなエレガントなデザイン ――はきごこちと機能、デザインの良さを両立させているということですね。

星加
 今回は、モニターさんもいつも以上にたくさんお呼びして、フィッティング比較をし、肌リフトの優位性を伝えられるようにしました。

西澤 モニターさんからは、はいているときのほうがラクという言葉をいただき、とてもうれしかったです。

杉野 展示会では、「肌リフト」を多くの方が試着されているのを見て、思わず涙。感想のコメントも本当にポジティブで感激しました。 西澤孝弘(インナーウェア商品統括部<取材当時>) 西澤孝弘(インナーウェア商品統括部<取材当時>) ――では最後に、はき方について教えてください。

星加
 私たちは1枚ばきでの着用をおすすめしています。ポイントは、"NANOテープを皮ふのたるみに沿わせて引き上げる"こと。NANOテープを肌にあてながら引き上げてください。気をつけてほしいのは、はき終わったあとに、手を入れて形を整えるなど直してしまうこと。引き上げ効果がなくなってしまいますので注意してください。

西澤 ひとりでも多くの人に試していただきたいので、今回"試着"していただいたお客さまに、プレミアムをプレゼントしています。

――え、ご購入ではなく、試着した方ですか?

西澤
 はい。ナノフロント®を使用した「やわらかコットンパフ」を差し上げています。クレンジングなど、このパフを使うとすごく落ちます。美容用品でもフェイスマスクなどでナノフロント®はよく使用されていますし、実際のご自身のお肌で、ナノフロント®の高い密着性、そのソフトな肌触りを感じていただけると、「肌リフト」への安心感も高まると思い、用意しました。

――プレミアムからもこの商品にかける情熱を感じます。ありがとうございました。
西澤孝弘

西澤孝弘 ワコールブランド事業本部商品統括部 インナーウェア商品営業部 ファンデーションランジェリー営業課(取材当時)。2004年入社以来、6年間の百貨店担当セールスを経て、商品部へ異動。2013年より、スタイルサイエンス商品をはじめ、―5歳の着やせパンツ、女神のヒミツビーナスハイウエストなど ワコールブランドのボトム全般のMDを担当。2016年9月に国際本部へ異動。

星加真美

星加真美 ワコールブランド事業本部 商品統括部 商品企画部 デザイン一課。ワコール入社後、「ー5歳シリーズ」や「クロスウォーカー」などのボトムや百貨店ブランド「パルファージュ」のデザイナーを担当。2015年よりキャンペーンボトムのチーフデザイナーをつとめる。

杉野菜穂子

杉野菜穂子 ワコール人間科学研究所。入社以来、ワコールブランド事業部で、「美ショーツ」をはじめ機能ショーツ、肌着等のパターン設計・企画開発・プランニングを経て、2010年7月より人間科学研究所にて研究開発を担当。

取材・文/大庭典子
人物撮影/合田慎二