ハート形カップで丸胸にメイク! 「パルファージュ ハートフルRichブラ」

語り/仙澤 里紗(チーフデザイナー)、北澤 亮介(MD)

1987年よりお花をモチーフにエレガントなコレクションを生み出してきた「パルファージュ」から、初のモールド成型タイプのブラが登場しました。可憐な印象のデザインとともに注目なのが、ハート形のモールドカップ。開発担当者にそのヒミツを尋ねました。

パルファージュ ハートフルRichブラ

緻密に計算したハート型カップでふんわりまる胸をメイク

――モールドカップブラジャーを開発したきっかけを教えてください。

北澤 店頭でのお客様データやお声がたくさん集まったおかげで、20〜30代のお客様が特に求めている機能が「造形性」であることを改めて認識することができました。これまで「パルファージュ」は百貨店顧客に向けた商品づくりをしてきたのですが、新規顧客となるその世代が主に利用するのは駅ビルやファッションビル。そこではモールドカップブラ(※)が主流ということもあって、「パルファージュ」でも初めて開発することになりました。

※「モールドカップブラ」は、一枚の生地をモールド加工(鋳型などを使って形を作る加工方法)してカップの立体をつくっているブラジャー。カップ部分の縫い目がなく、つるんとしている。「ブラジャーの種類を知る」ページ参照
仙澤 ワコール人間科学研究所にあった、「Aカップさんのためのブラ」(ワコールウェブストア限定)の開発段階の試作をベースに進めていきました。とはいえ、これまでつくってきた商品とは開発方法が全く違うので、いろいろな苦労がありましたね。

造形性をもたせつつ、花々をあしらった可憐なデザインに。
造形性をもたせつつ、花々をあしらった可憐なデザインに。

北澤 店頭でもPRしたいポイントとして、内側がハート型に見えるカップに機能性を詰め込んでいます。「パルファージュ ハートフルRichブラ」と、商品名にも反映しました。4色展開でブラック以外は、カップの肌側をピンク色にしています。

仙澤 たとえば、Aカップの方が着用したとき、Bカップのボリュームに見えるように…と基本的に1カップアップのシルエットを目指していまして。カップ内側のくぼみにトップをもってくると、トップ位置が上がって胸がまるく仕上がる機能性があります。やわらかくて、つけごこち・さわりごこちがとてもいいんですよ。今、「無理をしない」というのがスタンダードなので、自分に負荷をかけずラクに造形性をもたせられるのがポイントです。

北澤 モールドカップブラでも、こういった機能を入れている商品は珍しいと思います。本当に胸があるようなきれいな立体感が実現できるのは成型カップならではですね。

カップ内側のハート型がバストにフィットし、ふんわりまる胸に。
カップ内側のハート型がバストにフィットし、ふんわりまる胸に。

――カップの微調整やフィッティングが大変だったとか?

仙澤 不織布のブラは、それぞれのサイズで少しずつパターンを変更していくのですが、モールドカップブラは、たとえばB75とD65の型が同じというように、1つの型で複数のサイズを担うのが大変でした。全部でモールドカップの大きさは7つ、厚みは3パターンあります。1カップアップ、ハーフカップアップを目指すサイズはふわふわした触感で厚みもそれぞれに調整、スッキリアップを目指す大きなサイズは少し硬めにし、厚みも少なくしています。

北澤 このフィッティングも苦労しましたよね?

仙澤 そうなんです。フィッティングを繰り返し、モールドカップの内側に生地を切ったり貼ったりというアナログな作業でも確認していきました。また、サイズが大きくなってくると「ボリュームアップはしたいけれど脇はすっきりさせたい」という需要が出てくるので、厚みを何回も調整しました。触感を重視してとてもやわらかいモールドカップにしたので、脇のすっきり感に関しては、脇側にシートを入れることでバストを押さえてスマートなシルエットにしています。

北澤 いつもより多くのモニターさんや社内のメンバーにお願いして、試していただきました。商品が完成する前からやわらかい着用感やシルエットが変化する新鮮さに、感激の声が届いていましたね。パルファージュが定期的に実施している顧客調査においても、大変高い評価をいただけました。

カップ表の高いデザイン性と機能性を感じさせるカップ裏パッドの組み合わせが、事前調査でも好評だった。
カップ表の高いデザイン性と機能性を感じさせるカップ裏パッドの組み合わせが、事前調査でも好評だった。

――サイズ展開はAカップからとのことですが?

北澤 「パルファージュ」でAカップをご用意するのは大変久しぶりになります。ぜひAカップの方にも「1カップアップ」という機能を体験してほしいという思いから、検証にも時間をかけて取り組みました。

仙澤 これまでデザインのバリエーションが少なかったと感じていた人にも、楽しんでいただけると思います。

「フォトジェニックな花カフェ」をイメージした可憐なデザイン

――デザインのコンセプト教えてください。

仙澤 「フォトジェニックな花カフェ」です。天井からお花が吊り下がっているようなイメージを表現しました。以前より行ってみたいと憧れていたロンドンの花カフェに訪れた際、淡い紫が印象的だったので、それに近いメインカラーを設定しました。

――カラー展開は?

北澤 全4です。メインカラーはPU(パープル)。スキンカラーで使えるものとしてはベージュではなくあえてPI(ピンク)を、気持ちが上がるイメージで採用しました。ベーシックで、ストラップはフォーマルにも使えるBL(ブラック)と、売場でも存在感が出るOR(オレンジ)もご用意しています。

2股ストラップだから、アウターからのぞいてもおしゃれ。
2股ストラップだから、アウターからのぞいてもおしゃれ。

――モールドカップならではのデザインでの苦労はありましたか?

仙澤 カップの表がつるっとしていてアウターに響きにくいのが長所ですので、それを生かしつつかわいく仕上げる必要がありました。アップリケを土台につけたのもそういった理由からです。とめる位置も、カップに影響が出ないよう緻密に計算していきました。デザインはキャリア世代にトレンドの編レースを取り入れて、カラーごとに印象が変わるように、ラインを効かすなど工夫しました。アップリケの転写プリントも、カラーごとに色のデータを何回もつくって調整しています。

表のアップリケを止める位置も、カップに影響が出ないよう計算。
表のアップリケを止める位置も、カップに影響が出ないよう計算。

――おそろいのショーツやキャミソールについて教えてください。

北澤 ショーツはノーマル、ソング、ボーイの3タイプです。定番はノーマルですが、最近SNSをきっかけにデザイン性が強く、映えるソングの数字が伸びてきているんですよ。

仙澤 キャミソールはターゲットのキャリア層に人気のリブニットを使っています。バレリーナのような裾のレースもポイントです。カラーはオレンジ色以外の3色をご用意しました。

おそろいのショーツやキャミソール

北澤 多くのメンバーを巻き込み、協力をいただきながらつくった新商品です。百貨店では見慣れないブラジャーかと思うので、この商品をきっかけに売場でお客様と販売員の間で会話が生まれて、新しい関係づくりにも繋がればと願っています。デザイン性満載ですが、通常の「パルファージュ」よりお求めやすい価格ですので、ぜひチェックしてみてください。

北澤 亮介
  • 仙澤里紗
  • 仙澤里紗(せんざわ・りさ) 卸売事業本部 WBインナーウェア商品統括部 商品企画部 商品企画二課
    2005年入社。パタンナーを経て、デザイナーに。近年は「アルラ」「ラゼ」を担当。2019年より「パルファージュ」のチーフデザイナー。
  • 北澤 亮介
  • 北澤亮介(きたざわ・りょうすけ) 卸売事業本部 WBインナーウェア商品統括部 ブランド営業一課
    2008年入社。通信販売事業部、販売統括一部セールスを経て現職へ。2019年秋冬シーズンより「パルファージュ」を担当。
取材・文/シキタリエ
撮影/合田慎二