おしゃれは役に立たない？

晴れの日に持つ雨傘の意味。

　下着の機能はどんどん進化しています。スタイルや姿勢をよく見せてくれたり、動きやすかったり、蒸し暑い日もさらっと快適だったり、脱ぎ着やお手入れがラクだったり―。 現代は、目的に合わせてさまざまな下着を選ぶことができる幸せな時代なのです。だけど、わがままな私たちはそれだけでは満足できず、そこに＜最大限のおしゃれ感＞を求めてしまうのではないでしょうか。
　機能とおしゃれの間でゆれ動く女心はアンビバレント。世の中には（とくにワコールには）、機能的でおしゃれな下着がたくさんありますが、ふたつの欲求を完璧に満たすことは、愛と憎しみを同時に抱くくらい、実は難しいことなのかもしれません。

　なぜなら、おしゃれとは「洋服とその機能をマッチさせない」ことでもあるからです。これは世界的なファッショニスタとして知られるVOGUE NIPPONのイタリア人ファッションディレクター、Anna dello Russoがファッションのルールとして挙げていたこと。つまり、雨とトレンチコート、雪とモンクレール、天気のよい日と水着のような組み合わせはしないという意味だとか。
　彼女は子供の頃、晴れているのにフェンディの傘を持って登校し、からかわれた際に「私の今日のスタイルを完成するには必要不可欠なのよ！」と言い返したそう。泥道をハイヒールで歩かざるを得なくなった時や、寒い日にノースリーブで外出してしまった時などに、やせ我慢しながら思い出したい心強いエピソードですね。

やさしく愛したくなる下着。

　速く快適に歩く機能のみを求めるなら、ヒールの高い靴は時代遅れともいえますが、ハイヒールの造形的な美しさやセクシーさ、背筋がすっと伸びる感覚は永遠の魅力。効率を求める社会でも、排除されることはないような気がします。下着でこれに該当するのは、何といってもガーターベルトですね。このアクセサリー的なアイテムは、日常生活に不要なもの、面倒なものだからこそ、贅沢な心の余裕を生み出します。
　ガーターベルトが豊富なブランドといえばサルートです。今年の秋冬のサルートは、さまざまな愛をテーマに劇的なコレクションを展開。フェティッシュな細部の装飾は、ここまでやるか的な秘密めいた驚きに満ちています。

　展示会でインパクトがあったのが、写真の4点コーディネート。ガーターベルトのレースにプリントされたホログラフィーのようなハイテク＆セクシーなヒョウ柄は、これまで見たことのない不思議な美しさでした。プレゼント品のエプロンもそそられますよ。ファッションのルールからいえば、当然、料理の時につけてはいけません。
　秋冬コレクションで、もうひとつ目が釘付けになったのが、花のアップリケを立体的に配したトレフルのブラとショーツ。儚さを感じるほどの繊細さは、眺めているだけで愛しさが募り、花びらにふれるようにやさしく扱わなければと思いますね。周囲のクラシックカー好きやペット好きの友人たちが、何かにつけこう言うのを思い出しました。「手のかかるものや壊れそうなものこそ、可愛くてしょうがない！」と。

■サルート ：https://www.wacoal.jp/Salute/